サプライズ・ローズ

 



 とかく季節の変わり目は、今年はなかなか早い進行、それはぐんぐんと暖かくなって、このまま次の季節に直進かと思わせといて。あっさり裏切り、とんでもない勢いで逆戻りをしたりして。おかげさまで、毎日のちょっとした会話、気候のご挨拶では日に日に違うのを繰り出せるから、

  ――― 今日は暖かいね、昨日は寒かったのにね。

  ――― 昨日は暖かだったのにね、今日はなんて寒いやら。

 いつも似たようなことしか言えない、あんまり気の回らない人みたいね…なんて言われないから助かるが。

  “別にどうだって良いよ、そんなの。”

 はぁあと、判りやすくも大きな溜息をつき、どうしてくれようかと見やった大窓の外では、見渡す限りの空を埋めて、濃灰色の雲が重々しく垂れ込めており。手垢ひとつないほど磨かれてある窓ガラスには、風向きが変わると銀色の引っ掻き傷のような跡が走る。今日は朝からの雨が途切れず、午前中のずっとを様子見でつぶし、
『今日はこの調子で一日中降りそうだねぇ』
 監督がそうと見切ったことを伝えていただいたのが、ホールでの昼食の席でのこと。少しでも晴れ間が出ればという“待ち”に見切りをつけたので、残りの半日はいきなりの“オフ”扱い。そうは言われても、ここは自宅はもとより都心からも遠く離れたロケ先で。撮影向きのきれいに整備された観光地だから、出掛けようと思や見るものもないではないのだけれど。
『桜庭ちゃん、外出はペケだからね。』
 どうやって嗅ぎつけるのか、公表されてない筈のスケジュールを追って、ファンがホテルの周辺をウロウロしてるみたいだから。騒ぎになるから出掛けちゃダメだよと、前以てのクギを刺されてる。
“変装したって無駄だろしな…。”
 言われる前にそうと気づいたのは、此処が夏向きの観光地であり、自分たち以外の“観光客”はほぼ居ないから。撮影には人が少ない方が騒ぎにならずに好都合だからと選ばれた土地であり、人々が行き交う町角とかいうシチュエーションが必要なシーンでは、当地の方々にエキストラ参加してもらってた。そこまで閑散としているので、どれほどさりげない変装をしたところで、この上背、この風貌の青年が出てゆけば、あっさりと素性が割れるのは間違いなく。
「………。」
 どうせ出掛けるつもりなんてないんだし、と。忌ま忌ましげに窓を睨んでから、朝から幾つめだかの溜息を零し。腰掛けていたベッドへそのまま、後ろざまにばったりと倒れ込んだのは。ジャリプロの看板スターにして、若手俳優としても実績充填中の出世頭。インカレスポーツ界への女性ファンを増やした貢献を買われて、協会のキャンペーンボーイに任命されてもいる、桜庭春人くん、その人だったりするのだが。俳優さんとしてのお仕事の一環、春の番組改編用…ではなく、ゴールデン・ウィーク用のドラマスペシャルの撮影中にある彼なれど、スタッフさんたちの不手際というか、思惑の外れっぷりに振り回されてのこの難航振りに、いい加減、うんざりしかかってもいるところ。

  “これでも忍耐は養われてるって思ってたんだけれど。”

 まずは、春先の目まぐるしく変わりやすいお天気に振り回された。東京でスタジオ撮りの部分を先に済ませて、こちらでは屋外を中心に…というスケジュールだったのは、こっちを後にした方が、その分、少しでも風景が春めいてくるんじゃないかという段取りだったらしいのだが。ほぼ日替わりというノリで、毎日毎日 晴れたり降ったりが入れ替わるものだから、サイクリングコースや海辺でのシーンがなかなかまとめて撮り切れず。降れば屋内撮影を…というのにも限度があって、今日はとうとう撮るシーンのやりくりも尽きたらしい。
“まあね。お天気はスタッフの責任じゃあないから、しょうがないんだけれど。”
 問題なのはこのロケ地で。先にも述べたが、都心から結構離れた土地なので、風光明媚なのはともかく、交通の便も、ついでに電波の状態も悪いったらなくって。お陰様で、こんな風に時間が空けば…これが東京のスタジオならば、こっそりとメールを打ったりも出来たのに。ここいらはまだまだ、そういうのの中継塔や何やも整備されてはいないのだそうで。
『電話線なら通ってるし、ファックスも送れるからね。まあ支障はないんだけれど。』
 未だに携帯が自由には使えない土地が日本国内にあっただなんて。いやさ、そういう土地に自分が身を置くことになるだなんて。ちょいと考えていなかった、言ってみりゃ“想定外”? な事態になってしまったものだから、
「………。」
 溜息をつくのにも飽きてしまい、大きな手のひらを顔へと伏せて、いい子いい子と自分を宥めてみたりする。クラブだ何だへ遊びに行きたい訳じゃあないし、行きつけのレストランなぞへ繰り出したいのでもなく。趣味にまつわることを気の合う仲間と心置きなく喋りたいっていうのとも微妙に違って、あのね? そのね?

  ………そう。

 世間には内緒の“カレ氏”のことをついつい想うと、どうにも居たたまれず狂おしくなるだけのこと。
“カレ氏で合ってるのかな?”
 カノジョと呼ぶには…飛び切り気丈で、ともすれば自分なんかよりもずっと頼もしい人だしね。そか、だったらやっぱり“カレ氏”だなと。笑おうとして、
「………。」
 お顔が曇る。その、愛しい誰かさんの声も聞けないし、僕のこと忘れないでねというメールも送れないままに、もうかれこれ1週間は経っただろうか。それでなくたって撮影に入ってからの半月ほど、ずっとずっと逢えないままなのにね。確か先月のバレンタインデーに、向こうのマンションへとお邪魔して。甘いものが苦手な人と、それでも甘い一日を過ごしたのを最後に。逢う機会も作れないまま、それぞれに忙しい日々を送っての、もう半月ということになる。
“………。”
 揚げ句に、予定では今日にも解散となっていた筈が、こんな具合で東京からもずんと遠いところへと押し込められたままでいて。何がイヤだって、手隙身隙なのがイヤ。何にもすることないのがイヤ。遠い君に逢えないのは仕事のせいだものと思えば、さほどに落ち着けないということもなくて。手をつけるからにはきっちり役割を果たせよと、愛しの君からいつぞや言われたこともあり、カメラが回っているうちは、きちんと集中してあたれているのに。こんな風に中途半端な身になると、途端に何だか狂おしくなってしまうから堪らない。
“…よういち。”
 逢いたいし話したい。あのお顔を、姿を見たい。伸びやかなのにわざとらしく凄むとちょっぴり掠れる、あの声を聞きたい。淡灰色の眸、細い鼻梁。薄いめの唇。何かに書き付けでもしていて伏し目がちの無心な表情になっている、玲瓏端正な横顔を見たい。何かを思い出そうとして賢そうなおでこに伏せられると、金の髪を透かしてそりゃあ綺麗に映る白い手も見たい。あれほどの強いスナップを効かせてのパスを投げてるくせに、案外と細いというか骨張ってる手首が恋しい。ちょっぴり毒の効いてる即妙な物言いを、メールでいいから読みたい。桜庭とか元気かとか、誰が打っても同じものでも、彼から送られたメールで見たい。これは正しく禁断症状。蛭魔妖一さんへの飢餓状態がつのっての、自律神経へまで至ってる、とっても危険な禁断症状。
“…あ〜あ、だな。”
 高校生の頃だったなら、3日と空けずに会えていた。学業やアメフトを優先してもらえたし、芸能人としてのネームバリュー自体がまだまだ今ほどではなかったから、こんな風に半月も拘束されることなんて滅多になかった。だったからこそ、最後の学年、三年生のうちに、あの気難しくって難物の蛭魔を相手に、ああまでの加速をつけて親しくもなれたのだろうけど。今や、週に一度も逢えないでいる方が当たり前となりつつあって、それが何とももどかしい。
“妖一は平気みたいだけどもサ。”
 アメフトと、アメフトでの勝利と。そこへの執着が人一倍激しい分、他へはクールというのか淡白というのか、どうでもいいやというよな態度で通すことが多い人。それでなくとも、今いるチームを運営しているのが、またもや彼一人も同然な状態にあるものだから。練習メニューの組み立てに、合宿や交流戦のスケジュール調整と手配や交渉。部の備品の管理に発注、部員たちの動向の監視にと、よくもまあまあと呆れるくらいに、色んなことを把握している悪魔様。データ整理1つ取っても、敵味方双方の、チームカラーやゲームでの癖から、選手一人一人の特性やコンディションなどなどに至るまでと来て。とんでもない量の雑務相手に、1日が40時間くらいほしいような忙しさで過ごしているのも知ってるし、
“そういう作業も、楽しいというか充実してやってる人だから。”
 自分でまとめれば、端から端まで目を通す訳だから身にも付くしと、誰に言われるでなく、自発的に手をつけてる彼だから。中途で辞めさせるなんて何処の誰にも出来やしないほど。よって、退屈だからと携帯に注意が逸れることもなく。桜庭からの連絡がなくたって、
“ああ、あいつも忙しいんかなって。そのくらいにしか思ってもらえてないんだろな。”
 駄々を捏ねてまで独占したいとか、彼が一番好きなことを邪魔をしたいとか、そんなことは一度だって思わなかった…というと嘘になるけど。そこは基本だ、頑張れないでどうするかと、自分を必死に律して来た。妖一は自分なんかには本来関わり合いなぞ持たぬ人。そんな彼の隣りにいたいなら、それより何より…彼が大切なら、彼を困らせないでいたいなら、幾つかは我慢もしなけりゃいけない訳で。
“でも、逢いたいって思うのを我慢しなきゃってのは、どうかすると矛盾してる気もするけどな。”
 好きな人に会いたいって思うのは、一番自然なことだのにね。笑顔を見たい、嬉しそうな声を聞きたい。ワックスを落とすと柔らかな、あの髪を梳きたいし、暖かい肌に触れたい。くすぐったがって笑って、でも…視線は逸らさず。やがて近づくその存在を、しっかとこの腕に抱きしめもしたいけど。

  ――― でももう、自分たちは子供じゃないから。

 ほしいほしいとばかり言ってもいられないと、知ってしまったから。こちらからの“好き”へと応じるためにって、相手に何かを我慢させるくらいなら、こっちこそが我慢するのがホントの愛情だと判っているから。
“…明日は晴れてくれるかな?”
 あと、1日か2日で撮り終えられる。それまでの我慢だ良いなと、自分へ言い聞かせていると、

  ――― とんとん、と。

 廊下側のドアをノックする音がした。相変わらずの零細事務所で、桜庭はこういう“現場”に慣れてもいようからということで、今回もマネージャーさんは同行してないロケであり、
「???」
 誰だろうかと身を起こす。返事をしないでいると、
「桜庭さ〜ん、お届けものです。」
 そんな声がした。男の声だから、ファンの子が紛れ込んでの悪戯とか特攻とかじゃあなかろうが、
“お届けもの?”
 何か変だなと、そう感じた。手紙にせよ宅配便にせよ、まずはインタフォンでのフロントからの連絡という格好になるものではなかろうか。少なくとも公共の電波に顔と名前が露出している身。こっちから知らない人からだって注目は受けているのだし、その注目も、好意的なものばかりとは限らない。不審物だったら? 持って来た人が不審人物だったら? いつぞやストーカーもどきから襲撃を受けて以降、覚えのない人や物の接近には注意しなさいと言われてもいて、それでまずは警戒したのだが、

  「早く開けてくれませんか〜? 生ものだから、腐っちまいますよ?」

 こんなふざけた言いようをするボーイがいる筈はないし、それに。今度は作り声ではなかったので、

  「…っ!」

 がばっと。そりゃあもう、自己新記録じゃなかろうかというような素早さで、ベッドから飛び出すとドアへと駆け寄る。空耳かなんて疑ってる暇もない。焦りながらも内鍵を解き、防犯用のセーフティバーを外せば、訪問者の手の方が早くにバータイプのノブをがちゃりと動かし、
「…くぉら。そんな不用心に開けてどうす………。」
「よういち〜〜〜〜〜っっっ!!」
 ばふ〜っと。シャツとカーディガンという軽装のその懐ろへ、愛しい痩躯を迎え入れて…とゆーか、引っ張り込んで抱きすくめ。そのまま室内へ引き入れるのにかかった所要時間も、これまた新記録。
(笑)
「何なになになに? この近くで合宿してるの? それともどっかのチームの偵察とか交流戦への交渉とか? 言ってくれれば、空いてる日に僕が行ったのに。」
「言ってくれればじゃなかろうが。」
 だーもう、離れろと。それは広い胸板へ両腕を突っ張って、懐ろから出たがる彼だったのへ、ああごめんと腕を緩めれば、
「携帯の電波が通じてねぇ、こんな田舎へ勝手に離れやがってよ。」
 むうと不機嫌そうな顔を向けてから、
「先に言ってけば、何とでも出来たんだのによ。」
「何とでも?」
「ああ。一般の電話通信関係の中継塔はなくとも、例えば…。」
 某防衛関係の通信システムとか国土庁や運輸省の以下同文とか、そういうのへ乗っかっての交信が出来るような細工をちょこっと。
「…それって、ハッキングとか言いません?」
 それも、国家防衛用の最も厳重なガードがしかれていよう、回線とか周波数とかではなかろうか。そんなものに便乗して無事に済むんでしょうかと暗に訊きたかったのだが、
「別に難しいこっちゃねぇぞ?」
 ただまあ逆探されにくいようにっていう、途中の経由コースをな、模索すんのがちとややこしいからよ。そいで、先にどの辺りにいるのかを教えとけって思った訳だが。けろっとそんな言いようをする彼へ、
“…ああ、やっぱり本人は濃いなぁ。”
 迫力というのかインパクトというのか。その言動がこうまで心臓に悪い人。半月離れただけで寂しいななんて思いながら、実はこっそり胸の裡
うちに構築していた“仮“の妖一さんは、少なくともこんな、サイバーテロリストもどきの物言いはしなかった。早く起きないと集合時間に遅れるぞとか、体がなまるから暇が出来たら柔軟くらいやっとけとか。自分の想像力の範囲内の、もしかしていたわってほしいとか甘えたいとか思う、桜庭が無意識にリクエストしたことしか喋らなかったから。
「どした?」
 小首を傾げた美人さんへ、
「ん〜ん。ああ本物だって思っただけ。」
 ふにゃりと笑うと、
「………。」
 ふいっと視線を逸らし、そのまま部屋の奥へと運んでしまう人。あらら、怒らせたかな? 慌てて後へと続けば、細い背中は、リビングに入ってすぐのところで不意に立ち止まっていて、
「………。」
 リビングに入ってすぐ目につくサイドテーブルには、何度もめくられたせいだろう、手ずれして傷んだA4版の台本が置いてあり。丸々とした活字で刷られたタイトルへ、蛭魔が思わず苦笑する。
「ラブコメは卒業したんじゃなかったのか?」
「うん。でも、まだまだサスペンスものとかにはね。」
 人生の何たるか、人と人との間にはさまざまな葛藤があるものだという奥深さを知っていなければ、誰かの行動や心理の洞察なんて出来ないから。それで、探偵役には視聴者も納得のベテランさんが配されるのだし、それが悲劇の殺人であれば、犯人役とか関係者には思い詰めてる様が映える、やっぱり存在感のある人でないと。
「僕はまだまだ、名前ばかりが一人歩きしてるような身だからね。」
 演技がどうこうというより前の話。ドラマの中の役柄以上に“桜庭春人”という名前が強烈すぎて、ストーリー先行の、事件が次々に起こってお話がどんどん展開して行くタイプのドラマには、まだ向いてない。様々な個性や立場の登場人物同士が、ぶつかり合ったり判り合う、青春群像たら言われてるような、もしくはちょっぴりライトな恋愛ドラマの準レギュラーが限度。今回のドラマも、青年雑誌に連載されてたマンガが原作の青春もので、桜庭の役どころは自分へ好意を寄せてくれるヒロインへ、でもそれって恋愛感情かななんて言ってやんわりと袖にする先輩さん。主役は別の…歌手から俳優へ転向したばかりの男の子で、
「まだ連載中の原作ではサ、そっちの子のことを実は好きなんじゃないかってな伏線が出て来つつある役でね。」
 単発ドラマだから、そこまでのややこしい経緯へは届いてない脚本だけれど、もしも好評だったなら続編も撮るかも知れないそうで。
「今回は ちょい役なのにね。東京で撮る分で十分フォロー出来てたのにサ。」
 綺麗な風景を背景にした屋外のシーンなんて、どうしても要るって役じゃあないのにさ。そうと言って、ちょいと顔をうつむけたアイドルさんだったから。
「………。」
 春向けのそれだろう、濃色ながらも薄手のコート。前合わせのファスナーを降ろしかけてた蛭魔の手が止まる。普段着のようなあっさりとした恰好の彼が、そんな風に肩を落とすと、自分より一回りは大きいはずが、ずんと小さく見えたりし、
「…こら。」
 声をかけると、顔だけ上げる。何とも言えない…打ちひしがれた顔。しょうがねぇ奴だなと、それで通じる何かがあるらしい二人。ふわりと、体の側線から浮かせた両腕、開いた手のひら。それを合図に、
「よーいち〜。」
 数歩ほど残ってた間合いを埋めるように駆け寄って来て、すがるように きゅううっと抱きつかれた側が、なのに…安らかな翼にでもゆったりと包み込まれて、そのまま抱きしめられてるような感覚におちいるのは、

  “…内緒だな、うん。/////////

 ホントはね、逢いたかったのはこっちも同じ。大学の練習には出てないわ、生放送の番組には一向に出てないわ、本人にも連絡は取れないわ…だったので。春休みで堂々と展開中だった練習も、ついにはおっ放り出して、こうして逢いに来たんだけれど…それも内緒。内緒だからって、お口を封じたそのついで。甘い花蜜の香りのする懐ろに、いつまでも閉じ込められてたいって思ってた、金髪の悪魔さんだったそうな。









  clov.gif おまけ clov.gif



   ――― ねえ。

        んん?

   ――― 雨降らせたのも妖一?

        さあな。


 そっけない言いようをしたくせに、シーツからはみ出した裸の細い肩が震えてて。他愛のないことへ笑ってくれてるのを見てるのが嬉しい。雨催いとはいえまだ明るいうちなのに、ベッドの中、寄り添い合ってる。今朝までは思いも拠らなかったこと。一番大好きな人の温みが、懐ろの中にいる。こんな遠くまでわざわざ来てくれて。落ち込みかけてたことさえ、頑張って忘れて追いやってたのに。そんな無理をしていたのまで、あっさりとほどいてくれて…一心地つかせてくれた人。


   ――― 誕生日だから、来てくれたの?

        そんなじゃねぇよ。


 むしろすっかり忘れてたな、何にも持って来てねぇぞ、なんて。そんなことを胸張って言うのも、彼にはらしいことだから、嘘なのかどうかの見分けは難しい。ただね、


   ――― 逢いたいって思うのを我慢しなきゃってのは、
        どうかすると矛盾してることだよな?

  「あ………。」

 子供みたいな屁理屈だけどなと、苦笑した彼の…何とも照れ臭そうなその顔から、視線が外せなくって困った桜庭だった。



    HAPPY BIRTHDAY! HARUTO SAKURABAvv






   〜Fine〜  06.3.12.


   *さあ、アップが間に合うかどうかですな。
(笑)

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